かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2016年9月 国立劇場 文楽公演|通し狂言 一谷嫰軍記・寿式三番叟

国立劇場 第一九六回文楽公演 平成二十八年九月より(9月3日~19日)

<第一部>
・並木宗輔=作
 通し狂言 一谷嫰軍記
 初段 堀川御所の段・敦盛出陣の段〈約1時間30分※終了後、休憩30分
 二段目 陣門の段・須磨浦の段・組討の段〈約1時間30分※終了後、休憩10分
     林住家の段〈約1時間15分

<第二部>
国立劇場五十周年 寿式三番叟約42分※終了後、休憩15分
・通し狂言 一谷嫰軍記
 三段目 弥陀六内の段・脇ヶ浜宝引の段〈約1時間〉※終了後、休憩30分
     熊谷桜の段・熊谷陣屋の段〈約1時間50分〉

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
 左「一谷嫰軍記」熊谷次郎直実、右「寿式三番叟」翁(いずれも撮影:青木信二)

国立劇場開場50周年を記念してさまざまな公演が組まれていますが、文楽は「一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)」の通し狂言と「寿式三番叟」でした。
本当は、通しを一日で観るのがよいのだろうなと思いながらも、体力的に持たない気がして、二日に分けました。今回も良い席はあっという間に埋まったようで、後ろの方の席だったのですが、照明が良くなったのか、私の目が良くなったのか(?)、人形の顔がより立体的に見えるようになった気がしました。何にしても後ろの方でも十分に楽しめました。

「一谷嫰軍記」は、推理小説のような展開のお話です。熊谷次郎直実が平敦盛を殺したということで、またその時の様子もしっかりも描かれた上で、話が進んでいくのですが、三段目の熊谷陣屋の最後に、熊谷次郎直実が殺したのは実は息子の小次郎だったという真実を自らが語ります。
「ハテ最前も話した通り、手負ひと偽り、無理に小脇にひん挟み連れ帰つたが敦盛卿。また平山を追いつ駆け出でたを呼び返して、首討つたのが小次郎さ。知れた事を」
ほんならあの二段目の陣門の段は・・、組討の段は・・、ええーっ?!と、頭の中を行きつ戻りつして、そういうことだったのか、そう言われてみれば、と物語の全貌が明かされることになります。

直実の言葉を受けた妻・相模のエ、胴欲な熊谷殿。こなた一人の子かいなう。逢はう逢はうと楽しんで百里百里来たものを、とつくりと訳も言わず、首を討ったのが小次郎さ。知れた事をと没義道に、叱るばかりが手柄でもござんすまい」は、何回聴いてもじーんとします。そやそや、言うたれ、言うたれ!と加勢したくなります。でもこれが忠義でむしろ喜ぶべき誇らしいことになる封建社会の悲しさ。くーっ。 

初段・二段目は和生さんが大活躍!敦盛→小次郎→乳母 林と遣われていて、こんな配役もあるんですね。また三段目の清十郎さんが遣われた相模が印象的で、我が子への思いを切々と感じました。

「寿式三番叟」は三番叟の二人がハツラツとした動きで小気味よかったです。玉勢さんと蓑紫郎さん。足を踏み鳴らすのに合わせて、三番叟が首で拍子を取っているのが楽しげ。私にも鈴を振ってほしい。テテッテテ、テテッテテ、テッテ、テッテ、テッテ、テッテ♪

<メモ>
今回の第一部はお昼時に30分休憩があったので、お気に入りのパン屋さんでサンドイッチを買って持っていきました。国立劇場は、休憩時間中は客席内でも飲食が可能です。(酒類は禁止。また匂いの強いものは避けるなどマナーは守る!)劇場内の無料のお休み処や、ロビー内のベンチで食べることもできますし(混み合うことも多いです)、もちろん食堂、売店もあります。
チケットを提示すれば、休憩時間中に外にも出られるので、季節が良ければ劇場の外にあるベンチで外の風にあたるのも、幕間の気分転換におすすめです。また休憩時間に行われる緞帳の披露と解説も楽しみなのです。
国立劇場サイト内 観劇マナー入門 Q&A

<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2016年 9月文楽公演

2016年9月 国立能楽堂 普及公演|伊文字・玉鬘

国立能楽堂 九月 普及公演(2016年9月11日)
・解説・能楽あんない|「玉鬘」の狂相と悟り 西村聡(約30分)
狂言大蔵流】|伊文字(約35分)※終了後、休憩20分
・能【観世流】|玉鬘(たまかずら) (約80分)

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国立能楽堂の案内ちらしをお借りしました。
 薄紅葱地籠目花丸模様唐織(江戸時代・十九世紀・国立能楽堂蔵)

「伊文字」は、自分が人から聞き損ねた言葉を、なんで見ず知らずの通行人に尋ねるんやと思わずにはおれないのですが、通行人もしゃあないなと、「 いの字のついた国の名 ♪」、「 いの字のついた里の名 ♪」と唄いながら、踊りながら、答えを探していく様子が楽しかったです。ブツクサ言いながらも、1回やってみる、しかもやると決めたらノリノリで、ほんなら結構楽しかったりするでの精神(かどうかはわからんけど)は見習おう。

「玉鬘」はすごく好きな演目。派手な動きはないけれど、地謡も心地良く、最後、シテが顔を少し上げたときに、少しだけ笑みを浮かべているように見えたのが印象的でした。ホンマにそう見えた!能面は中間表現で、その場面や、演者の動きや、観る人の気持ちで表情が変わると聞くけれど、それを体感しました。玉鬘にはそんなことで苦しまなくてよいよと言ってあげたいな。

また冒頭の解説・能楽あんないで、「玉鬘」の背景となる源氏物語について詳しく説明があり、古典の素養がそれほどない私にとってはすごく有難かったです。アイが話していることもしっかり理解できました。

<公式サイトへのリンク>
国立能楽堂 2016年 9月普及公演 伊文字・玉鬘

2016年7月 国立能楽堂 普及公演|蚊相撲・巴

国立能楽堂 七月 普及公演(2016年7月9日)
・解説・能楽あんない|義仲を追い続ける巴 表きよし(約30分)
狂言和泉流】|蚊相撲(約35分)※終了後、休憩20分
・能【金春流】|巴(約75分)

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国立能楽堂の案内ちらしをお借りしました。
 近江八景図 矢走(今村紫紅筆・大正元年・重要文化財東京国立博物館蔵)

 

蚊相撲」のアド/蚊の精は、なんだか動きに見覚えがあり、4月の狂言の会で「武悪」を演じた方ではなかろうかと思ったら、やっぱりそうやった!野村又三郎さん。
愉快なお話やったけど、よくこんな設定を思い付くな~。蚊の精て。相撲取るて。

「巴」は平家物語で知る巴御前の勇ましいイメージとは少し違っています。力強い場面もありますが、どこかはかなげでもあり、寂しさを感じるお話でした。

<公式サイトへのリンク>

国立能楽堂 2016年 7月普及公演 蚊相撲・巴

2016年6月 国立能楽堂 普及公演|水掛聟・藤戸

国立能楽堂 六月 普及公演(2016年6月11日)
・解説・能楽あんない|戦の悲しみと武士の心 佐伯真一(約30分)
狂言大蔵流】|水掛聟(みずかけむこ)(約25分)※終了後、休憩20分
・能【観世流】|藤戸(約75分)

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国立能楽堂の案内ちらしをお借りしました。
 水浅葱地入子菱丸紋散模様厚板(桃山時代・十六~十七世紀・国立能楽堂蔵)

 

えらいこと間が空いてしまいましたが、何事も遅すぎることはないということで、できるようになったならすぐ再開するぞ。
「水掛聟」は擬音語が楽しかったです。田んぼに水が入ってくるときの「ガワッ、ガワッ、ガワガワガワッ」が、もうこの状況を言い表すにはこの言葉しかない!という感じで、田んぼでの光景がありありと思い起こされました。日本語の面白さに改めて気づかされる狂言でした。

「藤戸」は、シテの立ち上がる、しゃがむ、くずれ落ちるという所作に見入ってしまいました。特別な所作ではなく、もちろん演者自体の表情は見えないのだけれど、怒り、悲しみ、やるせなさが、こんなにもにじみ出るものなのかと感動しました。

<メモ>
国立能楽堂から徒歩10分くらいのところにある「MOKUBAZA」にてキーマカレーを食す。美味い!

<公式サイトへのリンク>
国立能楽堂 2016年 6月普及公演 水掛聟・藤戸

2016年4月 国立能楽堂 普及公演|横座・百万 、狂言の会|二人大名・鱸包丁・武悪

国立能楽堂 四月 普及公演(2016年4月9日)
・解説・能楽案内|南都の女曲舞舞い 天野文雄(約30分)
狂言大蔵流】|横座(約25分)※終了後、休憩20分
・能【宝生】|百万(約70分)

国立能楽堂 四月 狂言の会(2016年4月22日)
狂言【和泉】|二人大名(約25分)
狂言【大蔵】|鱸包丁(約30分)※終了後、休憩20分
狂言【和泉】|武悪(約50分)

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国立能楽堂の案内ちらしをお借りしました。
 金紅段枝垂桜尾長鳥模様唐織(江戸時代・十八世紀・国立能楽堂蔵)

5月と順番が前後してしまいました。短めのメモをば。
「百万」はシテの声がころころとまろやかで角がなくてなんて心地良いのか。
次々に繰り広げられる舞いが見せ場ではあるけれど、お母さんが子を思う気持ちにぐっときて、早く名乗り出てあげてほしい・・とちょっと思ったりします。

<公式サイトへのリンク>
国立能楽堂 2016年 4月普及公演 横座・百万

国立能楽堂 2016年 4月狂言の会 二人大名・鱸包丁・武悪

 

2016年5月 国立劇場 文楽公演|絵本太功記

国立劇場 第一九五回文楽公演 平成二十八年五月より(5月11日~23日)

・絵本太功記(2016年5月11日)
 本能寺の段・妙心寺の段〈約1時間30分〉※終了後休憩30分
 夕顔棚の段、尼ヶ崎の段〈約1時間40分〉

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
 左・右「絵本太功記」武智光秀(いずれも撮影:青木信二)

 

今回は初日の鑑賞となりました。平日だったので、会社からダッシュで国立劇場に向い、間に合うか?!という状況でしたが、そうとう素早かったらしく、上演前の三番叟にも間に合いました。でも、きれいな格好をしてはる人々に混じって、肩で息をしてヨレヨレだったので、次回は余裕をもって到着できるように段取るぞ。

絵本太功記は、夕顔棚の段/尼崎の段だけが上演されることが多いですが、今回上演された前段の本能寺の段/妙心寺の段から聴くことで、特に、主君である尾田春長(史実では織田信長)を裏切った、武智光秀(史実では明智光秀)の母・さつきの行動や心情の理解や受けとめ方、そしてじーんとする感情が深まります。

さつきは2月の京都公演で鑑賞したときと同じく吉田玉也さん。年老いた母親なので、全体的にゆっくりした動きなのですが、時に、はっとするほど毅然とした意志の強さを感じました。

<メモ>
国立劇場文楽公演はチケットを取るのがものすごく難しくなってきました。今回も完売した後に、毎晩、粘り強くWEBサイトを見ていたら、空席が出ていて幸運にも取ることができました。業界的に(?)、どういう仕組みになっているのかわかりませんが、毎回、戻りは出ているようなので頑張ろう。おーっ。

<公式サイトへのリンク>国立劇場 2016年 5月文楽公演 ※リンク切れ・確認中

2016年5月 国立能楽堂 普及公演|樋の酒・鉄輪

国立能楽堂 五月 普及公演(2016年5月14日)
・解説・能楽あんない|京都から読み解く「鉄輪」の世界 浅見和彦(約30分)
狂言大蔵流】|樋の酒(約20分)※終了後、休憩20分
・能【金春流】|鉄輪(約65分)

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国立能楽堂の案内ちらしをお借りしました。
 白地丁子立湧桐唐松模様単狩衣(江戸時代・十八~十九世紀・国立能楽堂蔵)


樋の酒は、難しいことは何もなしに楽しめました。
橋掛りに次郎冠者(酒蔵に閉じ込められている)、舞台に太郎冠者(軽物蔵に閉じ込められている)、その間に雨樋を渡して、お酒をやり取りし、実に美味そうに飲んで、だんだんと、ご機嫌さんに。

鉄輪(かなわ)の舞台は京都。夫に裏切られた女が、下京から、糺の森、御菩薩池(深泥池)を経て、貴船神社へ刻参りに通います。冒頭の浅見氏の能楽あんないで、詞章に出てくる京都の場所の説明があり、その場所の特徴、地図、距離感などを頭に入れながら観るとより理解が深まることを話されました。

今回、途中でふと、太鼓のトントントンという連続する音が、話の先を少しずつたぐり寄せているように感じることがありました。(笛は話を切り開いていくような感じですが)ずっと緊迫した曲なのでそう感じたのかもしれませんが、私にとって新しい感覚でした。

<公式サイトへのリンク>
国立能楽堂 2016年 5月普及公演 樋の酒・鉄輪