かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2017年2月 国立能楽堂 企画公演|謡講・八島

国立能楽堂 二月 企画公演(2017年2月18日)
・おはなし|庶民のたのしみ-謡講(うたいこう)- 井上裕久
・独吟(京観世の節・二段下ゲで謡う)盛久 サシ・クセ
・独吟 五目謡
・謡講形式の素謡|熊野(ゆや) (以上、約45分)※終了後、休憩20分
・能【喜多流】|八島 弓流 奈須与市語(約105分)

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国立能楽堂の案内ちらしをお借りしました。
 上村松園「焔」(大正七年・東京国立博物館蔵)

 

2月のちらしはいつもと趣が違い、月間特集「近代日本画と能」というテーマにちなみ、お能の「葵上」がモチーフとなった絵画が取り上げられています。「源氏物語」の光源氏の正妻である葵の上に取り憑いた六条御息所の生霊が描かれているのですが、着物が白地に藤と蜘蛛の巣の柄で、それがまた怖さと凄みを増幅させています。

さて今回はこの「葵上」がかかる普及公演ではなく、企画公演に行ってきました。
前半は謡講(うたいこう)のおはなしから始まりました。謡講は能を謡だけで表現する素謡(すうたい)を楽しむ会として、江戸時代以降の特に京都で盛んに行われていたそうです。能舞台ではなくお座敷のような場所で、謡い手が聴衆から見えないように仕切り、聴衆は聴くことに集中して物語の情景を思い浮かべます。また「京観世」と呼ばれる独特の謡い方にも特徴があります。この謡講の再現に取り組まれている井上裕久さん(シテ方観世流)がとても楽しく解説をしてくださり、その後に実際に、京観世の謡い方での「盛久」、しりとり形式でどんどん違う曲につないでいく「五目謡」(かなり高度な技!)、そして謡講形式の素謡「熊野」と続きました。
また「今日は謡講やっとるよ~」という目印に軒先に提灯がかかること(国立能楽堂のロビーにもかかっていました)、参加する人はお酒を持っていき、それを出樽(しゅったる)と呼んでいたこと、謡い終わって今のは良かったと感じたら小さな声で「よっ」と言うことなど、周辺のお話もとても興味深かったです。謡が生活の中にあり、身近な存在やったんやな~。京都で開催されているそうなので、いちど行ってみたいです。

後半はお能の「八島」です。弓流、奈須与市語の小書付きで、間狂言三宅右近さんが迫真の語りと動きでした。その後、後シテの義経の亡霊が現れ、源平の激しい戦いのさまを語ります。戦いには勝ったとはいえ、失ったものも大きく、どこかはかなくて憂いを感じさせるお話でした。
今回は「蝋燭の灯りによる」ということで、客席は手元資料が読めないほど真っ暗になり、座席の字幕表示もありません。詞章を暗記できているわけではなく、聞き分けられない言葉もたくさんありました。ただ、詞章を目で追わず、耳だけでぐっと集中して聴くことで、リズムや抑揚のある音として言葉がすっと入ってくるので、いつもより深く鋭く感じられるように思いました。まだ初心者の私には難しいところもありましたが、新しい気づきがあり、いま体験できて良かったかなと思います。何事も行ってみよう、やってみよう!(でも予習は大事!)

<公式サイトへのリンク>
2017年2月企画公演  蝋燭の灯りによる|謡講・八島