かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2017年12月 国立劇場 文楽公演|ひらかな盛衰記

国立劇場 平成二十九年十二月文楽公演(12月7日~19日)

・ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)
 義仲館の段〈約31分〉
 大津宿屋の段〈約31分〉
 笹引の段〈約33分〉※終了後、休憩25分
 松右衛門内の段〈約75分〉
 逆櫓の段〈約32分〉

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
 左・右ともに「ひらかな盛衰記」逆櫓の段(撮影:青木信二)


仕事も始まり、2018年も通常モードとなりました。昨年末に国立劇場 12月文楽公演「ひらかな盛衰記」に行ってきたのですが、覚え書きができていなかったので、まずはここからスタートです。何事も遅すぎることはないということで、できるようになったならすぐやろう!

■あらすじ
<義仲館の段>
舞台は京都の木曾義仲の館。山吹御前、息子の駒若君、腰元のお筆の元に、顔色の優れない義仲が戻ってきます。また続いて巴御前も駆け付け、鎌倉方の源頼朝に攻め入れられて、宇治の戦いで味方が敗軍したことを報告します。義仲は「今こそ木曾が最後の門出、巴来たれ」と告げ、山吹御前と駒若君をお筆に託して戦場へ向かいます。(その後、粟津の戦場で義仲は討たれてしまいます)

<大津宿屋の段>
舞台は、大津の宿屋清水屋。二組の家族が隣同士の部屋に宿泊しています。一組は京都から木曾へ向かう、山吹御前、駒若君、お筆、その父である鎌田隼人の一行。もう一組は、摂津国福島の船頭である権四郎、その娘のおよし、およしと前夫の息子の槌松の一行です。権四郎らは亡くなったおよしの前夫を弔う順礼中でした。

そんな中、年の近い駒若君と槌松が夜中に部屋を抜け出します。二人で遊んでいるうちに行燈の灯がばったり消えて泣き出したところに、山吹御前の一行を追ってきた番場忠太が現れ、その騒動で子供が入れ違ってしまいます。

<笹引の段>
お筆は駒若君(のつもり)を片手に抱いて、山吹御前の手を引き宿屋から逃れますが、一緒に逃げた父の隼人は追手に討たれてしまいます。そしてお筆が敵を追っていた隙に、山吹御前の訴えもむなしく、駒若君(と思っていた)は番場忠太に首をはねられてしまいます。戻ったお筆は仰天して悲しみますが、亡骸が身に着けていた笈摺から駒若君ではないこと、宿屋で入れ違ってしまったことに気づきます。駒若君はどこかで生きているとわかったものの、身の弱った山吹御前は息絶えてしまいます。お筆は声の限りを泣き尽くしますが、顔を上げて「お主の仇、父の敵」を取ることを決意し、竹を切って山吹御前の亡骸をそこへ乗せて進んでいきます。

<松右衛門内の段>
舞台は、大津宿屋に泊っていた、摂津国福島の権四郎の家です。子どもが入れ違ってしまったことに気付いた権四郎とおよしでしたが、向こうも槌松にひどいことはしないだろうと考え、いずれ会える日までと駒若君を大事に育てています。
そこへおよしの現夫の松右衛門が帰ってきました。権四郎の指導を受けた船頭の腕を見込まれ、梶原景時源頼朝の家臣)から船を前後左右に動かす逆櫓(さかろ)を他の船頭たちに指導する命を受けたことを嬉しそうに話し、権四郎もおよしも喜びます。

そんな中、お筆が笈摺に書かれていた「摂州福島松右衛門子、槌松」を頼りに権四郎の家にたどり着きました。権四郎とおよしが槌松が戻ってきたと喜んだのも束の間、お筆は槌松を死なせてしまったことを詫び、駒若君を戻してほしいと頼みます。権四郎は怒って、いつか槌松に会えると信じて駒若君を大切に育てていたのにと、駒若君を討ちにいこうとしますが、そこへ松右衛門が駒若君を小脇に抱えて現れます。そして松右衛門は、自分は義仲の家臣である樋口次郎兼光であること告げます。義仲の仇をとるために、権四郎の家に入り婿して逆櫓の技術を学び、梶原に、源に近づく計画だったのです。そして自分の義理の息子である槌松が、駒若君の身代わりになり忠義を立てたのは武士にとって嬉しいことで、自分がこの家の一員となったことの定めと思って諦めてほしい。駒若君の先途を見届けて、自分の武士道を立てさせてほしいと頼みます。権四郎は了承し、お筆は駒若君を連れて去っていきます。権四郎、およし、松右衛門は、笈摺を仏前に供え、涙ながらに槌松の回向をするのでした。

<逆櫓の段>
松右衛門による逆櫓の指導が始まりましたが、指導の途中で船頭たちが、松右衛門に遅いかかります。松右衛門が義仲の家臣である樋口次郎兼光であることを見抜いていた梶原景時の策略だったのです。船頭たちは松右衛門に倒されますが、その時に鐘太鼓の音が響き、松右衛門は自分が包囲されていることに気づきます。そこへ権四郎が畠山庄司重忠を案内して姿を見せます。権四郎は樋口(松右衛門)のことを訴え出た代わりに、樋口とは血のつながらない槌松の命を助けてほしいと頼みます(=駒若君の命を助ける)樋口は喜んで重忠の縄にかかり、権四郎の舟歌に見送られていくのでした。


おおっ、あらすじが長くなってしまいました。
今回特に印象に残っているのは、腰元のお筆で、私が行った日のお筆は吉田勘彌さんが遣われていました。山吹御前と駒若君を守る凛とした姿や、山吹御前の亡骸を竹で運ぶときのやるせなくも何かを決意している姿に引き込まれました。「辺りに繁る竹切って、舁(か)き上げ乗する笹の葉は、亡き魂(たま)送る輿車(こしぐるま)。轅(ながえ)も細き千尋の竹。肩に打ちかけ引く足もしどろもどろに定めなき。淵瀬と変はる世の憂きを身一つに降る涙の雨の、小止めみもやらで道野辺の草葉も浸す袖袂。泣く泣く辿り」

また逆櫓の段では、豊竹睦太夫さんと鶴澤清志郎さんが熱演され、権四郎が最後に取った行動と「極楽へやる救世の舟歌」を唄う最後の場面でぐっときました。権四郎を遣われたのは吉田玉也さんです。権四郎の義理人情の厚さ、孫を可愛いと思う気持ち、状況に対処しようとする心の揺れや葛藤がそんな風に感じさせるのかなと思いました。

今回も良いものを聴かせていただき、見せていただきありがとうございました。今年もたくさん見に行けるように頑張って働くぞ。おーっ。


<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2017年12月文楽公演