かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2017年5月 国立劇場 文楽公演|寿柱立万歳・菅原伝授手習鑑

国立劇場 第一九九回文楽公演 平成二十九年五月(5月13日~29日)

<第一部>
・寿柱立万歳〈約16分〉※終了後、休憩10分
・菅原伝授手習鑑
  茶筅酒の段〈約38分〉
  喧嘩の段〈約15分〉
  訴訟の段〈約18分〉
  桜丸切腹の段〈約36分〉※終了後、休憩30分
 豊竹英太夫改め六代豊竹呂太夫 襲名披露 口上〈約10分〉※終了後、休憩15分
  寺入りの段〈約13分〉
  襲名披露狂言 寺子屋の段〈約1時間9分〉

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
 「菅原伝授手習鑑」松王丸(撮影:青木信二)

覚え書きがすっかり遅くなってしまいましたが、久しぶりの文楽です。嬉しい!
第一部は、六代 豊竹呂太夫さんの襲名披露狂言ということもあってか、発売早々に満席になりましたが、公演期間が始まる少し前に、平日を中心に空席が出ましたね。 別の用事で休む予定だった平日に運よくチケットを取ることができました。前にも書きましたが、この「戻り」がどういう仕組みになってるのかわからないのですが、粘り強く頑張ろう。

<第一部>菅原伝授手習鑑
■主な登場人物
・梅王丸:右大臣 菅丞相(菅原道真)に仕える|春:梅王丸の妻
・松王丸:左大臣 藤原時平に仕える|千代:松王丸の妻|小太郎:二人の息子
・桜丸:斎世親王に仕える|八重:桜丸の妻
・四郎九郎改め白太夫:三つ子の梅王丸・松王丸・桜丸の父親。菅丞相の下屋敷で隠居

■あらすじ
桜丸と八重が取り持った斎世親王と菅丞相の養女の密会がきっかけで、菅丞相は政敵である藤原時平に陥れられ流罪になってしまいます。菅丞相の息子の管秀才は寺子屋の主人・武部源蔵と戸浪夫妻に匿われました。それぞれの主の関係性が崩れたことで、三つ子同志の関係性も非常に難しくなっているという背景があります。

茶筅酒の段】
そんな中、四郎九郎は70歳の誕生日に名を白太夫と改めることになり、お祝いに三つ子の妻たちがまず集まります。夫たちが到着しないため、庭にある梅・松・桜を三つ子に見立てて祝いの儀を取り行い、その後、白太夫は八重と一緒に氏神様へと出かけます。

【喧嘩の段】
梅王丸と松王丸が姿を見せますが、喧嘩になり、庭の桜を折ってしまいます。

【訴訟の段】
戻ってきた白太夫に、梅王丸は主である菅丞相の元へ行くことを訴えますが、却下されてしまいます。一方、松王丸は自分の主である時平が、父親や兄弟の主である菅丞相と敵対しているという複雑な立場に置かれており、勘当を申し出ますが、この訴えは聞き入れられました。

【桜丸切腹の段】
そこへ桜丸が現れ、菅丞相の流罪のきっかけを作ってしまったことの責任を取り切腹すると話し、八重が引き止めます。しかし白太夫は桜の木が折れたことを引き合いに、これも運命であるとして切腹の準備を整え、桜丸は自ら命を絶ってしまいます。

【寺入りの段】
舞台は菅丞相の息子である管秀才を匿う武部源蔵の寺子屋に変わります。留守を預かる妻の戸浪の元に、母親に連れられ小太郎という子が入門にやってきますが、母親は用を済ませてくると立ち去ります。

寺子屋の段】
源蔵が寺子屋に戻ってきますが、時平の家来である春藤玄蕃から、管秀才の首を渡すように言われ困り果てていたところ、入門した小太郎を見つけて、身代りにすることを思い付きます。そこへ玄蕃と首の検分役の松王丸が現れます。源蔵は奥の間で小太郎の首を討ち、松王丸に差し出したところ、管秀才のもので間違いないとして二人は立ち去ります。
その後、小太郎の母親が戻ってきます。源蔵は仔細を知られまいと切りかかりますが、母親は小太郎は身代わりとして役に立ったかと話し、そこへ松王丸も姿を見せます。実は小太郎は松王丸と母親つまり千代の息子で、菅丞相の恩に報いるために、小太郎を身代りにすべく入門させたことを源蔵に告げます。自らが置かれた状況を承知し、逃げ隠れせず潔く自分の首を差し出した小太郎。松王丸と千代は白装束となって、小太郎の野辺送りをするところで終わります。

おおっ、思いのほか、長くなってしまいました。
この時代の道理というのは、いつも本当に理解しがたいのですが、けなげに道をまっとうする人たちに心を持っていかれます。このお話では、特に松王丸と千代の息子である小太郎が管秀才の身代わりとなって最後を遂げる場面がまさにそれでした。
「アヽイヤ若君管秀才の御身代わりと言ひ聞かしたれば、潔う首差し延べ」
「アノ逃げ隠れも致さずにナ」
「につこりと笑うて」
というくだりは、けなげで、けなげで。7歳の子供が自分の置かれている状況をまるっと理解して、にっこり笑うなんて。そしてお母さんのお千代さんの心情はいかばかりかと考えるとうるっときます。
最後は小太郎を送る、
「・・・いろは書く子を敢へなくも、散りぬる命、是非もなや。明日の夜誰か添へ乳せん。らむ憂ゐ目見る親心、剣と死出のやまけ越え、あさき夢見し心地して、跡は門火に酔ひもせず、京は故郷と立ち別れ、鳥辺野指して連れ帰る」
という重々しくも流れるような「いろは送り」に、心と身体が揺られるのを感じながら幕が閉じられたのでした。

<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2017年5月文楽公演