かっちゃんの日記

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2017年5月 国立劇場 文楽公演|加賀見山旧錦絵

国立劇場 第一九九回文楽公演 平成二十九年五月(5月13日~29日)

<第二部>
・加賀見山旧錦絵
 筑摩川の段〈約12分〉
 又助住家の段〈約1時間21分〉※終了後、休憩30分
 草履打の段〈約33分〉※終了後、休憩10分
 廊下の段〈約25分〉
 長局の段〈約1時間5分〉
 奥庭の段〈約19分〉
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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
「加賀見山旧錦絵」長局の段 中老尾上/召使お初(撮影:青木信二)

加賀見山旧錦絵
■主な登場人物
◎大殿・多賀大領
◎忠臣チーム:谷沢求馬←その家臣・鳥井又助|又助の妻・お大|又助の息子・又吉
       中老・尾上←その召使・お初
◎お家乗っ取り企てチーム:家老・蟹江一角|局・岩藤|伯父弾正

■あらすじ
<筑摩川の段>
雨で増水した筑摩川にて、又助は悪家老の望月源蔵に騙され、一角と思い込んで多賀大領を討ってしまいます。

<又助住家の段>
それから5年後。一角に騙されてお家の宝を紛失した求馬は浪人となっています。家臣の又助はその宝が質入れされているのを知り、村のお金を使って請け出してしまいます。それを知った妻のお大は自分が身を売ってそのお金を用立てることを決意し、涙ながらに息子と別れます。
その後、家老・安田庄司が又助と求馬の元を訪ね、筑摩川で又助が討ったのは一角ではなく多賀大領であったことがわかります。驚いた求馬は又助を打ちつけますが、それをかばった息子の又吉を、又助自らが討ち殺してしまいます。求馬は主人だけでなく肉親も殺すのかと又助に竹槍で突きかかります。又助は息も絶え絶えになりながら、源蔵に騙されて大領を討ってしまったことを話しますが、そこへ妻のお大が戻ってきて自分も一緒に死ぬと喉に刀を突き立てます。(又助一家が全員死んでしまった・・)
又助の行動は大領を討ってしまった自分を求馬に討たせることで、求馬に手柄を上げさせようと考えた故だったのですが、仔細を把握した庄司は、求馬に帰参を許した上で、又助たちに心残さず成仏せよと告げるのでした。

<草履打の段>
場面は変わり、鎌倉の鶴岡八幡宮、局・岩藤と中老・尾上が登場します。
岩藤はお家乗っ取りを記した密書を尾上に拾われてしまったため、なんとか尾上を屋敷から追い出そうと企てています。
岩藤は尾上が町人出身であることにかこつけて、武芸の心掛けがないと罵倒し、懐剣を抜いてあおり、砂だらけの自分の草履で 尾上を打ちつけます。尾上はじっと耐えて、けなげにも至らぬ自分の教訓としてこの草履をお守りにしますと言って、草履を胸に納めるのでした。

<廊下の段>
昨日の鶴岡八幡宮の一件は屋敷の中で噂になっていました。岩藤は、尾上の召使であるお初が言いふらしたと言いがかりをつけてお初を打ち叩きます。(暴力反対!)
そこへ伯父弾上がやってきて、岩藤とお家乗っ取りについて密談します。

<長局の段>
二人の密談をお初は聞いていましたが、証拠もないことで、主人に難儀をかけてはいけないと思い、戻ってきた尾上に対して、何もなかったかのような顔をして一生懸命にお世話をします。それとなく忠臣蔵の話を振り、短気な行動で身を滅ぼすようなことがないように、尾上に言い聞かせます。
しかし尾上は覚悟を決めていました。書置きと岩藤から屈辱を受けた草履を文箱に納めて、実家へ届けるようにお初に言います。尾上を一人にしたくなかったお初ですが、後ろ髪をひかれながら出ていきます。

実家へ向かう途中で胸騒ぎがしたお初は、文箱を開け、尾上の覚悟を知るところとなり、急いで館へ戻りますが、尾上は命を絶った後でした。尾上の懐剣、遺恨の草履を手に、復讐の決意を胸に、お初は奥御殿へと駆けていきます。(ここで場面転換がありますが、ずっとドキドキしていました)

奥庭の段>
奥御殿の庭で、岩藤が口封じのために忍びの当麻を切り殺したところに、お初が現れ、岩藤に詰め寄ります。
「とぼけさしやんな、岩藤殿。昨日鶴岡にての一部始終、それゆゑに自害して相果てたる主人の敵、そればかりでなし弾正殿と奥御殿で今朝の密談、まだその上に今の先、曲者を手にかけたる様子、何もかも知ってゐる、主人の敵お家の仇、サアサアサアサヽヽヽ覚悟覚悟」
「主人の恨み受け取れ」とお初は尾上が自害した懐剣で岩藤を打ち取ったのでした。(そして遺恨の草履で岩藤を打ちつけます。そうやね、それはやっとかなあかんね)

そこへ現れた家老・安田庄司にお初は尾上の書置きを渡します。企てを知った庄司は、お初の主人への忠節をたたえて中老・尾上の二代目に取り立てます。
「お初は有難涙、歩むも行くも夢の夢、主は消ゆれど名は朽ちぬ、忠臣義女の道広く、館を離れ出でて行く」

第二部の方もあらすじが長くなってしまいました。
長局の段の前半、お互いを思いやる尾上とお初のやり取りはしみじみとさせられます。(太夫は竹本千歳太夫さん、三味線は豊澤富助さん、尾上を遣うのは吉田和生さん、お初は桐竹勘十郎さんです)後半、復讐を決めたときからのお初の動きはキレキレで、もうなんともカッコいいのです。ハッ、タッ、はらりっ、シュタッ、バスッと効果音が聞こえるような感じです。

また草履打ちの段で、竹本津駒太夫さんが語られた岩藤も印象的でした。粘っこい語りで、岩藤の憎たらしいことこの上なしでした。
「・・・足袋も草履も砂まぶれになつたわいな、イヤナニ尾上殿え、何とこの草履の汚れたのを拭いて下さんせぬか」 くーーっ。
又助住家の段の奥で、又助と妻のお大が、息子の又吉の可愛さ、不憫さを語る場面もぐっときました。(太夫は豊竹呂勢太夫さん、三味線は竹澤宗助さん)

いやーっ、とても、とても見ごたえありました。話が進むにつれて気持ちが引き込まれ、ドキドキ感は右肩上がりのグラフを描いたまま最後まで突っ走り、終わった後は爽快感がありました。ええもん見せてもらったという気持ちでいっぱいです。ありがとうございました!

<メモ>
プログラムの解説によると、筑摩川・又助住家と、草履打・廊下・長局・奥庭は、元々は別の作品だったものを組み合わせて上演するようになったそうです。へーっ。どちらも最後に家老・安田庄司が登場して、事情を察して良きに計らうところは、そういうことも関係しているのかな?もちょっと勉強してみたいなと思いました。

<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2017年5月文楽公演