かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2017年9月 国立劇場 文楽公演|生写朝顔話

国立劇場 第二〇〇回文楽公演 平成二十九年九月(9月2日~18日)

<第一部>
・生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)
 宇治川蛍狩りの段〈約32分〉
 明石浦船別れの段〈約19分〉※終了後、休憩30分
 浜松小屋の段〈約48分〉※終了後、休憩10分
 嶋田宿笑い薬の段〈約52分〉
 宿屋の段〈約46分〉
 大井川の段〈約20分〉

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
「生写朝顔話」(撮影:青木信二)

今月は文楽に2回行くことができました。嬉しい。また頑張って働こう。
あらすじを簡単に覚え書きします。

宇治川蛍狩りの段><明石浦船別れの段>
主人公は大内家の家臣である宮城阿曾次郎と、芸州岸戸の家老である秋月弓之助の娘、深雪です。京都の宇治川で阿曾次郎が詠んだ歌の短冊が風にのってひらりひらりと深雪のいる船に舞い込みます。(この風はいい仕事をした)二人は出会い、恋に落ちますが、急に阿曾次郎が鎌倉へ下ることになったり、深雪が家族と共に国許に戻ることになったりとすれ違いが続きます。途中、明石の浦で再会し、一緒に行こうという話になるのですが、急に風が吹き出して、お互いが乗る船は離れ離れになってしまいます。(この風はいけず)

<浜松小屋の段>
その後、深雪は阿曾次郎を追って家出をし、苦労の末、目が見えなくなり、いまは浜松の街道で三味線を弾きながら粗末な暮らをしています。そこへ、深雪を捜している乳母の浅香が通りがかり声をかけますが、深雪は落ちぶれてしまった自分を恥じて名乗り出ず、あなたが探している人は、川へ身を投げたそうですよと嘘を言って、小屋へ戻ってしまいます。浅香は嘆き悲しんで、深雪の母が亡くなったこと、位牌に顔を合わせにきてほしいと遺言されたことを一人語った後、「何か心に頷きて」木陰に姿を隠します。それを聞いた深雪はたまらず小屋から出て、「コレイノコレ浅香。今言うたは皆偽り。尋ぬる深雪はわしぢゃわいの。・・」と言ってわっと泣き出します。そこへ浅香が駆け寄って、二人は再会を果たします。しかし浅香は人買いと切り合いになり命を落としてしまいます(全体を通して、ここで浅香が切られるのがいちばん理不尽やと思いました。)

<嶋田宿笑い薬の段>
阿曾次郎は家督を継いで、駒沢次郎左衛門と名を替え、岩代多喜太とともに嶋田宿の戎屋に滞在しています。実は岩代は、お家乗っ取りを企む一味の一人で、その企みを邪魔する駒沢を亡き者にしようとしています。そして岩代の旧知である(怪しげな)医者、萩の祐仙と組んで、お茶にしびれ薬を混ぜて駒沢に飲ませようと計画します。しかし戎屋の主人である徳右衛門がそれに気づき、祐仙がしびれ薬を入れた茶釜の湯を捨てて、替わりに笑い薬を入れます。

岩代は、祐仙が点てたお茶を駒沢に勧めますが、徳右衛門は宿でお出しするものは毒見が必要だと言います。そこで祐仙がしびれ薬の解毒剤をこっそり飲んだ後に、自分の点てたお茶を飲むのですが、笑いが止まらなくなり、この計画は見事に失敗に終わります。

<宿屋の段>
部屋に戻った駒沢は、かつて自分が深雪に詠んだ朝顔の歌が衝立に書かれているのに気づきます。徳右衛門に尋ねたところ、朝顔という盲目の女(実は深雪)を知るところとなり、呼び寄せることにしました。二人は同じ場所にいるのですが、駒沢は連れの岩代の手前打ち明けられず、深雪は目が見えなくなっているため、お互いを確かめ合うことができません。その後、宿を出た駒沢が託した扇、目の薬、お金を徳右衛門から受け取った深雪は、駒沢が阿曾次郎であることに気づき動揺します。そして制止されるのも聞かずに、雨の中を駒沢を追って飛び出します。

<大井川の段>
深雪はなんとか大井川にたどり着きますが、駒沢は川の向こう岸に渡った後で、しかも雨が激しくなりもう船は出ません。絶望して川に身を投げようとする深雪を、後を追ってきた奴の関助と徳右衛門が制止します。関助は浅香が夢枕に立って、深雪の居場所を教えてくれたこと、また深雪は浅香が死ぬ時に守り刀を託されたことをお互いに話したところ、突然、徳右衛門がその守り刀で自分の腹を刺します。驚く二人に、徳右衛門は、自分がかつて深雪の父、秋月弓之助に窮地を救ってもらったこと、浅香が自分の娘であることを告げ、縁あって親と同じく秋月家に仕えることになった浅香がその忠義を果たしたことを「でかしをつたな」と称えます。そして駒沢から託された目の薬と、甲子の年の生まれである自分の血を一緒に飲むと目が治るいうと駒沢の言付けを伝え、それを飲んだ深雪の目がたちまち開き、徳右衛門の忠義に深雪が涙するところで話は終わります。(その後、駒沢と深雪は再会できるそうです)

いやぁ、恋する深雪ちゃんが突っ走りました。浜松小屋の段で、浅香が「エヽコレ申し、聞こえませぬぞえ深雪様。家出なされしその時も、一言明かして下さつたら、仕様模様もあらうもの。」という語りがあるのですが、そうそれ!そこ!と突っ込んでしまいました。

今回、特に印象に残ったのは、浜松小屋の段で、深雪を見つけた浅香が登場する場面です。ゆっくりとした調子で「あら尊と導き給へ観音寺、遠き国より遥々と、乳人浅香は浅からぬ嘆きも身にぞ笈摺の、深雪の行方尋ねんと、思ひ立つたる順礼も、辛苦憂き身のやつれ笠、露のやどりも取りかねて、杖を力に歩み寄り・・」
と語られるのですが、じんわりと引き込まれていく感覚がありました。太夫は豊竹呂勢太夫さん、三味線は鶴澤清治さんです。人形は、浅香が吉田和生さん、この段の深雪は吉田蓑助さんです。

また嶋田宿笑い薬の段の三味線にも興味津々でした。奥の太夫は豊竹咲太夫さん、三味線は鶴澤燕三さんです。祐仙が茶釜の中にしびれ薬を入れて悪だくみを決行しているときに、なんとも不穏な三味線の表現があるのですが、その後、徳右衛門がそれをまたひっくり返して笑い薬を入れているときには、「祐仙の上手をいってる感」が三味線で表現されているように感じました。この情景表現がとても面白くて聴き入ってしまいました。

色々な見どころ、聴きどころがあり、今回も楽しませていただきました。ありがとうございました!

<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2017年9月文楽公演