かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2018年2月 国立劇場 文楽公演|八代目竹本綱太夫五十回忌追善・豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露

国立劇場 平成三十年二月文楽公演(2月10日~26日)
<第一部>
・心中宵庚申(しんじゅうよいごうしん)
上田村の段(約56分)※終了後、休憩30分
八百屋の段(約43分)
道行思ひの短夜(約29分)

<第二部>
・花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)
万才・鷺娘(約21分)

・八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露
口上

・追善・襲名披露狂言
摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
合邦住家の段(約1時間40分)

<第三部>
女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)
徳庵堤の段(約27分)
河内屋内の段(45分)※終了後、休憩25分
豊島屋油店の段(約55分)
同   逮夜の段(約20分)

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
「摂州合邦辻」合邦住家の段(撮影:青木信二)

 

今年初めての文楽に行ってきました。わーい。
第二部に、豊竹咲太夫さんの父にあたる八代目竹本綱太夫の五十回忌追善と、咲太夫さんの弟子にあたる豊竹咲甫太夫さんの六代目竹本織太夫襲名披露の口上がありました。「織太夫」は八代目綱太夫の前名です。口上の後、追善・襲名披露狂言として摂州合邦辻が上演されました。また第一部の心中宵庚申、第三部の女殺油地獄についても、八代目綱太夫が曲の伝承に深く寄与しており、口上は第二部に組み込まれていましたが、公演全体として追善の趣がある構成となっていました。

お祝いということもあってか、いつもより和装の方が多かった気がします。「一緒にお祝いする」という気持ちや、それをきっかけに「今日は一張羅を着よう」「いつもよりちょっとおしゃれをして行こう」と楽しめるのはええことやな~と思います。私は普段通りでしたが、またそれも良し。

一方、演目については、第一部から第三部まで、花競四季寿を除いてお祝い感があるものはなく、例によって「何でこの人が死ななあかんねん・・・」という話が見事に揃っていました。それぞれの演目で、形は違えど主人公が息絶えてしまう結末、そこに至るまでに繰り広げられる心が痛くなるような情景に引き込まれました。

特に印象に残ったのは、摂州合邦辻の後場で、今回襲名された織太夫さんと三味線の燕三さんです。後半、玉出御前が瀕死の状態で「実は・・・」と自分の取った行動の裏にあった真実を語り始め、それとは知らず娘を刺してしまった父・合邦が悔みの念と娘への情を語り、そして皆が玉出御前の成仏を願って念仏を唱える場面あるのですが、三味線が「詰めてくる」感じはぞくぞくしました。

とりどり広げる数珠の輪の
中に玉手は気丈の身構へ、俊徳丸を膝元へ、右に懐剣、左に盃
外には父(てて)の親粒が、導師の役と鉦撞木(かねしゅもく)
母は涙の目も開かず、宵は死んだと思ひ子が、回向のための百万遍
今また無事なと悦んだも、露と消え行く勤めの念仏

文字として眺めているだけだと、身近な言葉遣いではないですし、取っつきにくいのですが、節が付いた語りと三味線は、流れるように心地よく頭の中に入ってきます。自分で口に出してみるのも楽しいです。(もちろん公演中は心の中で!)
今回も良い体験をさせていただきありがとうございました。

<追記>
この公演の初日に豊竹始太夫さんが亡くなられました。2017年12月公演のひらかな盛衰記・義仲館の段の義仲役が、私が最後に聴かせていただいたお声になりました。
お祝いの公演が続きなかなか難しいかもしれませんが、どこかのタイミングで献花台など設けられましたらお参りさせていただきたいと思います。まずはこの場で手を合わせて、ご冥福を心よりお祈りいたします。

<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2018年2月文楽公