かっちゃんの日記

 -見て、聴いて、楽しかったこと、嬉しかったことの覚え書きです

2018年5月 国立劇場 文楽公演|彦山権現誓助剣

国立劇場 平成三十年五月文楽公演(5月12日~28日)

<第二部>
・彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち
 須磨浦の段〈約47分〉
 瓢簞棚の段〈約76分〉※終了後、休憩30分
 杉坂墓所の段〈37分〉
 毛谷村六助住家の段〈82分〉

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国立劇場の案内ちらしをお借りしました
 左「本朝廿四孝」横蔵 後に山本勘助
 右「彦山権現誓助剣」毛谷村六助住家の段(撮影:青木信二)

 

お久しぶりの日記になりましたが、その間にすっかり爽やかな季節になりました。季節の変わり目は気圧や気温が不安定でしたが、少しずつ落ち着いてきて、体も気持ちもほっとしているような気がします。洗濯物もカラッと気持ちよく乾いてくれて嬉しい!

そして、体調も良くなったところで、国立劇場の5月文楽公演に行くことができました。やったー。今回は人形遣い吉田幸助さんが五代目 吉田玉助を襲名されるということで、第一部が襲名披露公演の「本朝廿四孝」と口上、そして「義経千本桜」という演目でした。第二部は「彦山権現誓助剣」という演目で、私は第二部に行ってきました。

主人公のお園ちゃんが、父と妹までをも討った京極内匠への仇討ちに奔走するのですが、まぁ格好よくて、かわいらしいのです。

前半の瓢箪棚の段では、その名の通り、瓢箪が植えられている棚の上で二人の戦いが繰り広げられます。初めは刀と刀で一戦を交えて、お園の刀が折られると今度はくさり鎌を手元でぐるぐると回して、京極内匠へ投げつけるのです。この場面の人形遣いはお園が吉田和生さん、京極内匠が吉田玉志さんで、太夫は竹本津駒太夫さん、三味線は鶴澤藤蔵さんでツレの鶴澤清公さんも加わり、緊張が高まります。相手をグッと睨みながら、くさり鎌を投げるタイミングを伺っているお園ちゃんがほんまに怖い。その後、京極内匠が瓢箪棚からひらりと飛び降りて(この時、人形遣いの玉志さんも「はっ」という一声とともに一緒に飛び降ります!)逃げていくのですが、ドキドキする場面でした。

そして後半の毛谷村六助住家の段では、お園は亡き父が自分の婚約者と定め家督を継がせようとしていた毛谷村六助と思いがけず会うことになります。六助が名を名乗り、女房はいないことを確かめたときのお園は、嬉しさのあまりうろうろと完全に浮足立って、「六助をうつかり眺め、見とれゐる」の状態になっています。同じ人形なのに、前半とは全く違う様子のお園ちゃんを見ながら、人形遣いさんの表現の幅は本当にすごいなと改めて思いました。そしてお園は、まだ自分の名も名乗っていないのに、既に女房であるかのように、頭に手ぬぐいを巻いて夕食の支度をし始めます。かまどの火に息を吹きかける火吹竹を尺八と間違えて自分で可笑しがったりして、六助から「全体こなたはマア誰ぢや」と尋ねられるまでの場面は、長いノリツッコミを見ているようでかわいらしくて可笑しかったです。なんとかお互いが誰かを確認できた後は、えらいこと飲みっぷりの良い三々九度を行い晴れて夫婦になります。そしてその後、六助を騙して仲間の母親をも殺した微塵弾正と、お園の父であり六輔の師匠でもある吉岡一味斎を討った京極内匠が同一人物であることがわかり、仇討ちに向かうところで話は終わります。

あらすじや登場人物をだいぶ端折りましたが、仇討ちのストーリーが進行する中で、随所にちりばめられている子が親を想うエピソードもじーんと心に残るお話でした。(お園の妹・お菊の忘れ形見である弥三松が母を恋しがる場面、六助が母の四十九日までお墓の近くの小屋に住んで、三度三度の食事を供えて喪に服している場面など)親孝行せな。今回も良い体験をさせていただいてありがとうございます!

公演は5月28日まで続き、二部は休日も含めてチケットがまだ取ることができるようです。なかなかに長丁場の公演ではありますが、お時間が許せばぜひ行ってみてください。(ずっと座っているとしんどくなるので、30分休憩の時に受付でチケットを見せて劇場の外に出て、軽く体を動かすのがよい感じです)


<追記>
会場ロビーに今年の2月に亡くなられた豊竹始太夫さん、4月に亡くなられた竹本住太夫さんの訃報の立札が設けられていました。素晴らしい舞台を体験させていただいたことに感謝しながら一礼してきました。ご冥福をお祈りいたします。


<公式サイトへのリンク>
国立劇場 2018年5月文楽公演